ステンレスとは

ステンレスという言葉が身近なものになってから幾十年かが過ぎましたが、ステンレスとは何でしょうか?
人間と「さび」との歴史から抽象的に表現することはできても、科学的に定義することは非常に難しいことです。
ステンレスという
言葉の意味
ステンレスとは、「さびにくい=Stain less」と表現します。
ステンレスの使用初期、「さびない」と解釈され、「さびない鋼=不銹鋼」と訳された事から、
「さび」に対して万能な防食効果を持つような印象を持たれ、耐食性についての基本知識に
起因するトラブルが一般の人たちとの間で未だに起こることがあります。
”Stain less”を直訳的に「さびが非常に少ない鋼」と理解する方が良いでしょう。
環境にもよりますが、ステンレスがより良い耐食性を持っているのは、その表面に常に作ら
れているクロムの酸化皮膜(一般的に不動態皮膜と言われる)の作用によるもので、環境が
変わったりその皮膜が破壊された場合には、耐食機能は失われます。
ステンレスの範囲 ステンレスを科学的に定義するとどうなるのでしょうか。
これは一言では言い切れない複雑なもので、一般的には次の項目が上げられます。

(1) 合金成分としてクロムを含有していて、その含有量がステンレスの耐食性を持つ要因の
     「不動態」を作ることのできる量以上であること(下限は約12%と言われているが、
    11%、13%という説もある)という古典的な説明。

(2)その合金が工業材料として使用できるために、これを阻害する範囲以上のクロムを含まな
    いこと。(現在のJISでは上限32%)。

(3)耐食性だけから見れば前述のような定義でも良いが、耐酸性、耐熱性や耐酸化性を持つ
   合金も広く総称する場合がある。21/4クローム1%モリブデン鋼も耐食、耐熱を目的とした
   合金である。しかしこの説は一般的ではないとされている。

(4)”Stainless Steel”で「鋼」である限り、鉄以外の合金元素の合計が50%以下のこと。
   しかしこのように定義するのは、一般の人やステンレスを初めて取扱う人にとって非常に
   難解で、むしろ「不動態を作ってさびにくさを維持する合金で、クロムを約12%~32%
   含んでいる鉄系の合金」とでも表現した方がよりわかりやすい。

金や白金などの貴金属が「化学反応を起こさない」という耐食性について万能な性質を持っているのに対して、
ステンレスは大気中で酸化し「不動態皮膜」という保護性皮膜が表面にできて耐食性を維持しています。
「不動態皮膜」は、傷がついても大気中では再生されますが、
再生できない状態になるとステンレスと言えども腐食します。
保護皮膜で「さび」を防ぐ方法として”めっき”によるものがありますが、
これは母材と異なる金属などの材料で皮膜しているもので、それ自身は再生することができません。
めっきと比較して、ステンレスは同じ材質で自己再生が可能な「不動態皮膜」を持っていると言えます。